亜矢が東京本社で働くようになってひと月が過ぎた。

この一月は製品企画二課の仕事を覚えること、この課の人々の名前とそれぞれの役割を覚える毎日だった。

月曜日の定例の朝礼の時間だ。河本課長がいつものように通達を行ったのち、事務連絡を島田美香が行う。

「皆さんはすでに社内メールで知っていると思いますが、今週新たな同僚が健康食品事業部に加わります。所属は当二課ではありませんが、本日中にこちらにも来られるそうです」

この会社、エルモンド商事のよさはまだ創立して数十年なので、会社全体に活気があることだと言われている。社員の移動もとても活発なのだ。




亜矢が来て一ヶ月の間に、健康食品事業部だけでもすでに一人が本社からアメリカ事業部に転勤し、別の一人が北海道支社から転勤で来ている。

同僚の誰もが社員の移動には慣れている。




その午後、別の課の課長に連れられて転勤して来た社員が挨拶に来た。