冷たい彼の溺愛は、2人きりのときに。




「……あの時」



頭を撫でる手を楠木が止めたかと思うと、彼は口を開いた。



あの時…?



「何もできなくてごめんな。
ずっと後悔してる」



切なげな目に変わる。
だからどうして楠木がそんな顔するの…?



私まで胸が苦しくなる、その表情。



後悔…楠木は何に対して後悔して、謝ってるの?
私に対して?



「なんで楠木が謝るの…?」
「…謝ったところで、何も変わらないよな」



楠木が自嘲気味に笑うから、なんだか胸がもやっとした。



「いや、あのさ…そんな顔しないでよ。
なんか調子狂うから」



嫌いだからこそ、余計に調子が狂う。



これ以上深く聞いてしまえば、楠木のことを知ってしまえば、なんだかダメな気がした。



それはきっと“バスケより大事なもの”を知ることを指すと思う。



そこまで聞く勇気は、今の私にはない。