冷たい彼の溺愛は、2人きりのときに。




楠木に抱きしめられたおかげで、私がバレることはなくなったけど、逆に私たちの周りは少し騒がしくなる。



「ここ電車なのに…」
「今どきの若者は大胆ね」
「あの人かっこいいから羨ましいな」



そんな声がはっきりと耳に届き、恥ずかしくて結局目をぎゅっと閉じるのは変わらなかった。



「やばくない?
女嫌いの楠木があんな堂々と」



「あの子愛されてるね。
どんなに可愛いか気になるわ」



「でもさっき恵美じゃない?って言ってなかった?」



「だって一瞬恵美に見えたから」
「てか恵美って懐かしすぎでしょ」



なんとかこの場を乗り切ったと思った直後、私の話をされてドキリとする。