冷たい彼の溺愛は、2人きりのときに。




とうとう私の姿を捉えたらしい。



「確かに……って、ねぇ、あの彼女恵美に似てない?」



全身の血の気が引くような、そんな感覚に襲われる。



私の名前を呼んだ、ということは覚えているんだ、私のことを。



これ以上は耐えられない。



心臓もドクドクうるさくて、ぎゅっと目を閉じたその時。



ふわりと、突然何かに包まれる。



思わず目を開けるけど、視界は暗くて。
目の前にはシャツがある。



そして背中には手をまわされているため、楠木に抱きしめられているとようやく理解できた。



「楠木、ここ電車…」
「いいから大人しくしとけ、バレたくないだろ」



「え……」



今の言い方…もしかして楠木は、私のためにこうしてくれたの?