冷たい彼の溺愛は、2人きりのときに。




だけど、今もバスケを続けていたなんて。
それだけ好きだったの?



黒い感情がふつふつと湧き出てきて、そんな自分が嫌になる。



「…ちょ、ねぇ見てよあれ、楠木じゃない?」



その時。
圧倒的な存在感を放つ楠木に気づいた二人。



当たり前だが、楠木は本当に目立つ。
電車内で何度周りにチラチラ見られたことか。



だけど今は状況が違う。
バレないように私は顔をそらした。



私とその子たちの間には数人しか人がいない。
下手をすればバレてしまう可能性だってある。



会いたくない。
私の存在を認識してほしくない。



「うそ、本当だ!やっぱイケメンだなぁ」
「本当にバスケ続けてないのかな」



「一回話しかけてみる?」
「えー、無理だよ、それにあれ彼女っぽくない?」



すぐ声が聞こえてしまう距離に私たちがいるというのに、小さな声だから聞こえないとでも思っているのか、気にせず話す二人。