冷たい彼の溺愛は、2人きりのときに。




ようやく離してくれ、一息つく私。



どうして電車に乗っただけでこんな思いしないといけないんだ。



もう二度と楠木と電車に乗ってやるものか、と思っていると、また電車がある駅で止まる。



楠木から少しでも意識をそらそうと、ドア付近を見たその瞬間。



心臓がドクンと嫌な音を立て、固まってしまう。



ゆっくりと開く電車のドア。



お願い、開かないで。
その思いとは反対にドアが完全に開いてしまう。



一瞬で頭が真っ白になってしまった。



「あははっ、本当に意味わかんないよね!」
「今日だってさ、何あの失敗しまくりな見本の仕方!」



大きなスポーツバックを肩にかけ、電車に乗り込む女子が二人。



服装は他校の紋章が入ったジャージだった。