私の想像は、楠木と違う席に座るというものだったというのに。
これだと楠木との距離が近いじゃないか。
「なあ」
「何?」
「なんでこんな距離開けるわけ?」
「あんたと並びたくないから」
だから私はギリギリまで楠木と距離を開ける。
「お前って本当に…あれだよな、バカだよな」
「なっ…!失礼ね!第一もし誰かに見られたら」
私がまだ言いかけてるというのに、楠木は制するようにして私の唇に人差し指を置かれる。
「ここ電車。静かに」
少し色っぽく微笑みながら言うから、また胸が高鳴ってしまう。
悔しい、やっぱり楠木には敵わない。
急いで楠木から視線をそらし、熱くなる顔を隠すようにして俯く。



