冷たい彼の溺愛は、2人きりのときに。




「いやー、青春はいいなぁ」という先生の言葉を恨めしく思いながら、抵抗することもできずに楠木の後ろをついて行く。



唯一救われたのは、もう時間も遅いため、校舎には人がいないことだ。



もし誰かにでも見られたら…と思うと、最悪の展開すら予想できる。



誤解だけはされたくたくない。



「ねぇ、あんたについて行けばいいんでしょ?
だったら手離して」



逃げることを諦め、素直に言うと楠木は意外にも手を離してくれた。



だけど楠木の思い通りになっている自分が嫌で、自然とため息を漏らす。



「ねぇ、私にまだ何か用なの?」



楠木の隣に行き、見上げると彼もチラッとこちらを向いた。



「用って、普通に帰るんだろ」
「まさか一緒に帰るとかないよね?」



「それ以外に何があるんだよ」
「はぁ!?絶対に嫌!」



なんで帰りまで楠木と一緒じゃないといけないんだ。