「いえ、大丈夫です。
ちょうど今帰るところだったんですよ」
私は笑顔を浮かべ、楠木の方を一切向かずに教室を出ようとする。
「そうか。
でも楠木は帰らないのか?」
なのにこの先生は…!
どうしてそれを楠木に聞くんだ!?
「いや、帰ります」
ほら、先生のせいで…!
すごく睨みたくなったけど我慢する。
「じゃあ先生が鍵閉めるから二人とも帰っていいぞ」
日頃のお礼だと続けて言う先生だけど、全くお礼になってない。
「い、いえ…!
それは先生に悪いんで私が」
「ありがとうございます。
じゃあ俺たちはこれで失礼しますね」
「え、ちょっ…わっ…!?」
私の言葉を制すように楠木が話したかと思えば、手首を掴まれて歩き出してしまう。
だから自然と私の足も動いた。



