「だったら離して」
「無理」
「はぁ?早く帰りたいんだけど」
この危険生物から早く身を引きたい。
もうプライドなんてどうでもいいくらいにだ。
だけど楠木は私を離すわけもなく。
「簡単に帰すわけねぇだろ」
楠木の低い声が耳に響き、思わずビクッと肩が震える。
危険を察知し慌てて俯くと、楠木は小さく笑った。
「なんで俯くんだよ」
「あんたが危ないからでしょ」
場所も場所だ。
もし誰かに見られたらどうするんだ。
誤解されるなんて死んでもごめんだった。
「俯かれたらキスできねぇんだけど」
「……っ」
なのにこいつは、さらに大胆なことを言う。
腹が立つ以上に、その言葉で顔が熱くなってしまう自分が嫌だった。



