「騒ぐな、耳が痛い」
「そんなの知らないから!」
「それ以上騒いだらその口塞ぐぞ」
「……っ!?」
ぐっと顔の距離を縮められて言うものだから、冗談じゃないことぐらいは伝わった。
私は仕方なく黙る。
「…ふっ、可愛い」
そんな私を面白そうに笑い、バカにしたように言ってきたからイライラは募っていく一方。
またじっと睨んでやれば、楠木も見つめ返してきた。
しばらくの間沈黙が流れる。
一刻も早く帰りたいのに、楠木がそれを許してくれない。
するとようやく楠木が口を開いた。
「お前を彼女にしたい理由なんて、普通に考えて一つしかないと思うけど」
「は……?」
普通に考えて一つしかない?
そんなのバカにしたいからでしょ?
楠木と仲が良かった斗真にフラれた私を弄びたいのだ。



