冷たい彼の溺愛は、2人きりのときに。





少しの沈黙が流れた後。



突然腕を楠木の方へ引っ張られ、バランスを崩してしまう。



後ろへ倒れこむ前に、楠木に後ろから抱きしめられた。



肩を抱くようにして引き寄せられ、ぐっと距離が近くなる。



「い、いきなり何して」
「震えてる」



「え……?」
「お前、震えてるけど」



言われて初めて気がついた。



手が、指先が。
小刻みに震えていた。



「気のせいだから…震えてない…」



嫌だな、こんなの私らしくない。
どうして震えるんだろう。



「悪い、思い出させたな」



ふわりと頭に重みを感じたかと思えば、頭を撫でられていることに気づく。



“思い出させた”。
それは多分、中学のことを指してる。



何気なく言ったつもりなのかもしれないけど、私はその言葉で目頭が熱くなった。