呆然とする中で、ただ唇から伝わる温もり。
その状況を理解するには、時間が必要だった。
どうして私は…楠木に、キスされてるの?
ようやく唇を離されたかと思えば、今度は額を合わせられる。
顎に添えられていた手は、いつのまにか私の頬へと移動していた。
楠木との距離が近くて、それ以上に驚きでいっぱいで。
何が何だかわからなくなっている私に対し、楠木は小さく笑った。
「……固まってる。可愛いな」
さっきから本当にどうしたんだって楠木の心配をしたくなるほどおかしかった。
どこかで頭が打ったんじゃないかって。
いつもの冷たい楠木はどこへ行ったんだ。
目の前の楠木は甘い。



