私は逃げるようにして後ろに下がるけど、楠木の足が止まることはない。



「な、何…来ないでよ」
「………」



私が止めようと声を出しても、楠木は私を見つめるだけで口を開かない。



あっという間に後ろの壁まで追い詰められてしまう。



さすがに壁ドンまではされなかったから、横に行けば逃げることができた。



だけど、どうしても楠木から逃げるように背を見せるのは嫌だったから、負けじと私は動かず睨み返す。



そしたら……。



また、楠木は笑った。
色っぽく、どこか危険なにおいを漂わせながら。



本気で危険を察知した時には、もう楠木の手は壁に手をついていて。



顎に手を添えられ、気づけばもう……唇を重ねられていた。