『氷室さん』
確か斗真がそう呼んでいた人だ。
そしてきっとこの人は、斗真のことが好きだと思う。
前に一度会った時に十分それが伝わってきた。
真っ直ぐで、私に対して敵対心も抱かれてたな。
「あなた、恵美ちゃん…よね?」
そう聞かれ、思わずビクッと肩が震えたけどすぐ笑顔を作る。
「はい、そうです」
「……そっか…会えてよかった」
「え…?」
「私、あなたと一度話したいと思ってたの」
またあの日みたいに真っ直ぐで、少し睨むような目つきで見つめてきた。
「氷室ちゃん?
この子、知り合い?」
「まあね。
ちょっとこの子と話してくるから」
それだけ言い残し、氷室さんは私の目の前までやってきた。
「いい?
なるべく人がいないところの方が嬉しいかな」
有無を言わせないほどの、力強い言葉。
私は素直に頷いた。
きっと、私のことをよく思ってない。



