冷たい彼の溺愛は、2人きりのときに。




それから一時間以上歩き回っていると、突然楠木のスマホが鳴った。



電話だったらしく、楠木がスマホ越しで何やら話していた。



「……ああ、わかった。
すぐ戻る」



すぐ戻る。



その言葉を聞いて、クラスの子に呼び戻されたのだとわかった。



「……悪い、なんかトラブルあったらしくて戻る。
お前は…もうすぐ斗真来るよな」



「そうだね…」
「じゃあ、あとは頑張れよ」



楠木は少し眉を下げて笑い、私の手を離した。



このままだと行ってしまう。



そう思った私は、無意識のうちに楠木のシャツを掴んでいた。



「……田城?どうした?」



そこでようやくはっと我に返るけど、もう遅い。



これは逆にチャンスだと思い、ほとんど勢いで口を開いた。



「斗真と話した後…楠木にも、話したいことあるから…その、最上階の空き教室で話す予定だから…後で来てほしい、です…」



最後の方は語尾が弱くなり、楠木が見れなくて俯いてしまう。