ーーー「ただいま」



あの後、ちゃんと仕事を終わらせてから家に帰ってきた。



両親共に仕事のため、家は私一人。



寂しさは不思議と感じなくて、自分の部屋へと向かう。



ガチャリと音を立てて開いた部屋の中は、バスケ関係のものは一切ない。



だけど、押入れにちゃんと残してある。
それは未練がある証拠。



「……よし」



バスケを辞め、押入れに直してから一度も触れていないバスケ関係のものを、今日は取り出そうと思った。



ゆっくりと押入れの襖を開けて、中を覗く。
目に映らない隅の方にそれらは置いてあった。



まず目立ったのは、使い古されたバスケットボール。



懐かしくて、胸がぎゅっと締め付けられるような感覚に陥る。



だけど、もう逃げないって決めたから。
ゆっくりとそのバスケットボールに手を伸ばす。