冷たい彼の溺愛は、2人きりのときに。





「……なんで…」
「ん?」



「なんで…そこまでしてくれるの……?」



私がどれだけ、楠木に助けられたと思う?



もし楠木がいなかったら…きっと今も、一人で暗い思いのまま過ごしていただろう。



前なんか進めず、きっと立ち止まっていただろう。



「一番はお前が好きだからだけど、やっぱり諦めてほしくねぇ。


まだ次があるから、あんな形でバスケ人生を終わらせてほしくない」



諦めてほしくない…次が、ある?



「でも私…もう中学の時に辞めて逃げて…諦めた…」



そんな私に、次なんてない。



「あるだろ、どんな形になろうとバスケと関われる方法なんていくらでも。


一度逃げ出しても、戻ってこればいい。
次に向けて頑張ればいい。


俺もバスケ捨てたんだ。
だけどまだ、バスケしたいと思ってる」



「じゃあなんで…」



「お前がいないと意味がねぇ。
俺はお前と一緒にバスケがしたい。


今度は俺が、お前を支えたい」



ドクンと心臓が音を立てる。



楠木の瞳は揺らがない。
真剣な表情。



本気で…そう思ってくれている。