冷たい彼の溺愛は、2人きりのときに。




「お前がバスケのことあんなに好きだったからこそ、余計に辛いと思うんだよ。


好きだったものが嫌いになるって、そう簡単にはならねぇけど、お前はそれほどのことがあったんだ。


一度嫌いになったらさ、また好きになるのって嫌いになるよりもっと難しいことだと思う」



楠木の瞳は相変わらず澄んでいて、迷いがなくて、真っ直ぐで。



中途半端な私の心にも、すっとその言葉が入り込んできた。



「だけど、お前は今悩んでる。
それってすごいことだと思うけどな」



ああ、また視界が滲む。
涙が溢れそうになる。



「……ほら、泣けばいい」



楠木の手が、私の頭の上に置かれた。
優しく、温かい。



その手つきも、言葉も、表情も全部。