「顔暗すぎだろ」
私より先に楠木が口を開いた。
そこでようやく楠木の方を見ることができる。
「俺のことで考えすぎんなよ。
昨日のことは気にしてねぇから。
逆に俺の方が謝るべきだな。
昨日お前に思い出させて無理させた」
どうして楠木が謝る必要があるのか。
「あんたが謝る必要ないでしょ?
謝るべきなのは私の方なのに」
「なんでだよ。
お前何も悪いことしてねぇだろ」
「したじゃんか」
「誰だって弱ってる時、助け求めるもんだから」
「そうだとしても、あんた傷つけた」
「俺はそこまで弱くねぇよ。
逆に助け求められるぐらいの存在になったんだなって、嬉しいぐらい」
嘘だ。
昨日楠木が私にキスをする前。
一瞬、切なげな表情をしていた。



