冷たい彼の溺愛は、2人きりのときに。




「ごめん、一人でも大丈夫かなって…」
「でも結構量あるだろ」



私の前にやってきた楠木はいつも通りの口調で話し、私の持つプリントを全部持ち出した。



「全部あんたが持たなくていいでしょ」
「別に、すぐそこだし」



「いや、でも…」
「早く行くぞ」



楠木はそれだけ言って、私に背中を向けて歩き出してしまう。



変わらないな、楠木は。
私だったら、そんな風に平然とできない。



昨日私があんなことしたっていうのに。



教室に入り、二人向かい合って座る。



そこまでは良かったのだけど、そこからどうすればいいのかわからない。



どんな顔をすればいいのか。
何を話せばいいのか。



ごめんって謝るべきなのだろうけど、謝ってしまえば余計楠木が傷ついてしまうんじゃないか。



そんな風に深く物事を考えてしまい、中々楠木を見ることができない。