これが、私が望んだことなのだ。
涙が頬を伝う中、楠木が唇を離す。
「……泣きすぎ」
それ以上何も言わず、ただ息が乱れる私の涙を優しく拭ってくれる。
だから余計に涙が止まらない。
息を整え、酸素が脳に行き届いたところでようやく我に返った。
自分がどれだけ酷いことをしたのか。
ここにきて理解した。
そう。
私は、自分が苦しみから解放されたいからって……目の前にいる楠木にすがった。
優しい楠木のことを、利用したんだ。
「……余計なこといちいち考えんな」
少し前に言われたことを、また楠木に言われてしまう。
どこまでも楠木は、私のことを第一に考えてくれていた。
「……だって…わたしっ」
「自分が楽になる方法を選べ。
お前が少しでも楽になるなら、俺は都合のいい人間でいい。利用すればいい。
だから罪悪感なんて感じるな」
「……っ」
楠木は…あんたは今、自分で何言ってるのかわかってる…?