冷たい彼の溺愛は、2人きりのときに。




こんな自分が小さく思えてきて、今度は涙で視界が歪む。



苦しい。
この気持ちをどうすればいい?



いい加減、忘れてしまえばいいのに。
私はいつまでこうしてるんだろう。



「……っ」



このまま、消えてしまいたい。



いっそのこと、この世界からいない存在とみなされた方がマシなんじゃないか。



そう思いながら、いつのまにか夕焼け色に染まってきた空を立ち止まって見上げる。



相変わらず、綺麗だ。
この景色は依然として変わらない。



病院で入院した時も。
歩けるようリハビリ練習した時も。
足の自由が効かないまま、体育館に顔をのぞかせた時も。



景色はいつだって、変わらず立派で綺麗だった。



それが憎いとさえ思ってしまい、涙がまた頬を伝う。



「……田城…」



その時。
すぐ後ろの方で、楠木の声が聞こえたような気がした。