冷たい彼の溺愛は、2人きりのときに。




「秀哉くん!
じゃあ俺とやろう!」



そんな楠木の相手役に立候補したのは、小学五、六年生だろうか、誠実そうな男の子だった。



「ああ、いいぞ」



「やった!今度こそ秀哉くんに勝ちたいんだよな〜!」



「カズ、頑張れ!」
「今度こそ勝てるぞー!」



周りに応援され、俄然やる気になるカズと呼ばれた男の子。



楽しそうだなぁと、微笑ましくなる。



だけど楠木を応援する言葉がなく、可哀想だなぁっと思ってしまった。



だからといって私が頑張れと応援してやれば、子供たちに冷やかされるのが目に見えるから何も言わない。



すると突然、楠木が私の方を向いた。
思わずドキッとしてしまう。



偶然だと思ったけど、一応頑張れと口パクで言ってやれば、一瞬目を見張る楠木。



そんな楠木の様子を見て、自分のしたことが途端に恥ずかしくなった。