みんなが動くたび、シューズがキュッと音を鳴らす。
懐かしい、この音も。
ドリブルの音も、耳に残る。
好きだったな、全部。
自分でも驚くぐらい。
「秀にい、ディフェンスやっぱり上手くできない、ファールしちゃう」
「亜紀はすぐボールを奪おうとしすぎだ」
「だってとれそうなんだもん。
秀にい、見本みせて」
キラキラした目でお願いされ、楠木はため息をつきつつネクタイを緩める。
なんだかんだ優しく、バスケの見本をしてくれるらしかった。
「あー!亜紀、それ秀哉がバスケしてるの見たいだけだろ!」
「うん、そうだよ!」
「ずるい!俺も見る!」
「えっ、楠木くん見本するの!?」
「私も見たい!」
するとあっという間に楠木の周りに人が集まる。



