冷たい彼の溺愛は、2人きりのときに。




「秀にいー!お姉ちゃーん!
先に入ってるよー!」



「ラブラブして来ないとかなしだからなー!」



結構前を歩いていた亜紀ちゃんと隆盛くん。
その距離のせいで、叫ばれてしまう始末。



「…行くか」
「そうだね、これ以上騒がれたら困るし」



「恥ずかしいの間違いだろ?」
「……嫌い」



どんなに優しいからって、意地悪なのに変わりない。



じっと睨んでやれば、小さく笑われてしまう。



「自然体のお前が一番いいな。
変に考えすぎんなよ」



「えっ…?」



楠木の言葉がすぐ理解できず、聞き返そうとすればまた手を引かれ歩き出してしまう。



結局何も聞けないまま、久しぶりにドリブルの音が耳に届いた。