また過去を思い出していたら、中々涙が収まってくれなかった。
そんな中、楠木はあえて人通りの少ない道を選んで歩いてくれて。
その時ふと、楠木が足を止めて私の方を向いた。
「……田城」
楠木が私の名前を呼び、そして涙で濡れる頬にそっと手を添えた。
「楠木…どうして……どうして私は、こんな人間なの…?自分が嫌になる…」
こんなこと楠木に言ったところで、迷惑をかけるだけだってわかっているのに。
それでもこの気持ちを誰かに聞いてほしいと思うのは、自分勝手で自己満足なのかもしれない。
「いいから、続けてみ?
思ってること全部、言えばいい」
それなのに楠木は、こんな私を許してくれる。
受け入れてくれる。
どこまでも楠木は優しかった。