しつこい湿気に苦しめられた梅雨が終わった。
そうなれば本格的な夏が始まる。
朝から蝉の鳴き声が夏の到来を強く感じさせた。
私、田城 恵美(たしろ めぐみ)は普通の冴えない女子高生、だと思う。
彼氏は中学の時に一人いたけど、できれば思い出したくない。
それ以来、恋なんてする気にもなれなくて今日まで過ごしてきた。
そしたら気づけばもう一年以上経っていて、今は高校一年の夏頃だ。
時の流れは本当に早い。
「………最悪」
電車通学の私は学校の最寄りで降りると、違う車両から圧倒的な存在感を放つ男が一人降りてきた。
周りの人たちのほとんどが彼に視線を向ける。
そんなことに気にもくれず、彼は改札へと足を進めていた。