その笑顔は嫌いじゃないなって素直に思う私。
「…田城?なんでお前も靴履いてんだよ」
そして私も楠木と同じように靴を履けば、今度は不思議そうな目で見られる。
「なんでって、私も駅まで行こうと思って」
「用があんのか?」
「ないけど…」
「なら行く必要ねぇだろ、別に俺送るとか考えなくていいから」
まさに送ろうと思っていたから、楠木の言葉に驚いてしまう。
「だって楠木、私の家来てくれたじゃん」
「俺の意思でな。しかも送るって普通、男が女にするもんだろ」
「それは偏見でしょ。
外も明るいし、そんな考えすぎないでよ」
このまま何もせずに帰ってもらうだなんて悪い。
だから私が先に外を出れば、楠木はため息をついて後に続いた。
なんだか勝った気分。
いつも楠木がしてるように、先に行動して有無を言わせないようにしてやったのだ。



