冷たい彼の溺愛は、2人きりのときに。




本当にダメだ。
全身までもが暑くなる。



夏のせいにしたいけど、クーラーが効いてる部屋でそれは言い訳にしかならない。



「……わかったから…もう何も言わないでよ…」



やっぱり楠木には敵わない。



頬に触れてきた楠木の手から逃れたくて、その手首をそっと掴む。



私なんかよりもずっと大きかった。
手のひらは、もっと大きいんだろうな。



男の人の手。
この手で楠木はバスケをしていたんだ。



そこではっと我に返る。



またバスケに関連付けてしまい、ずっと楠木の手首を掴んだままだった。



自分のした行動にも恥ずかしくなり、慌てて離して楠木を見ると、じっと私を見つめていた。



何か話そうと思い、言葉を探す。



「……手、大きいね」



やっとの思いで口にした言葉は、あまりにも場に合わない不自然な言葉だった。