「何で…なんでそんなバカなことしたの…?」
こんな私なんかのために、大好きだったはずのバスケ捨てただなんて。
楠木のこと大嫌いだって言ってたこんな私のために、ここに来ただなんて。
「なんとでも言え」
楠木はそう言って、泣いてる私を引き寄せ抱きしめた。
楠木の腕の中にすっぽりとはまる。
「それぐらい好きなんだよ、お前のこと。
絶対側にいて支えてやりたいって思えるぐらい。
バスケ好きだったはずなのに、それ以上。
第一あの時お前に出会わなかったら、絶対バスケ続けてなかったわけだし」
「…でも、私なんて……」
「お前はずっと一人で耐えてきたんだ。
もうこれ以上自分を下げなくていい」
背中に回された手に力を込められて、ぎゅっと力強く抱きしめられるけど、苦しくない。
むしろ温かい。
心が、いつもよりずっと。
涙が止まらなくなってしまう。
「このままだと、何も変わんねぇからさ。
辛いだろうけど乗り越えよう」
涙が邪魔をして、ろくな声が出せない。
その代わりに、ぎゅっと私も楠木にしがみつく。
こんなにも温かい人のことを、私はどうして嫌いだなんて言ってたんだろう。
自分を恨みたい。
その後に流れた沈黙の中に、私の泣き声だけが部屋に響く。
目の前にいる楠木は、わかってくれていたのだ。
一人じゃないと思えることができた。
ようやく、少しだけ。
救われた気がした。



