冷たい彼の溺愛は、2人きりのときに。




わかってくれる人がいた。



ただその事実があっただけで、今の私にはもう十分すぎるぐらいなんだ。



涙で視界が歪む。
急いで否定したくて、首を横に振った。



「楠木は、悪くない…あんたは悪くない、から…」



「もう絶対、お前にあんな思いさせたくねぇ。
中学の時のこと、全部忘れろとは言わない。


だけど一人で抱え込んで、これ以上過去に囚われてほしくねぇんだ」



真っ直ぐな楠木の瞳が、私を捉える。
それとほぼ同時に、涙が私の頬を伝った。



ねぇ、憶測かもしれないけど…あんたが。
楠木がバスケ捨ててこの高校に来たのって……。



「だから俺はここに来た。
お前と同じ高校を選んだ。


後悔なんか一つもねぇ。
何度中学に戻ろうが、俺はバスケを選ばない。


お前が何言おうと、俺は離れねぇしお前のことも離さねぇよ」



ドクンと心臓が音を立てる。
どうしようもなく、自分が醜く思えて仕方がない。