冷たい彼の溺愛は、2人きりのときに。




楠木が私のことを好きだなんて信じられなかったけど、彼の本音を聞いたら本当なのかなって思ってしまう。



でも…でもね。



「楠木の好きだった私は、もういないよ…?
逃げたんだよ私」



バスケ一筋だった私は、もうここにはいない。



今じゃこんな風にひねくれた性格の、醜い私しかいないのだ。



「お前の、あの選択は間違ってねぇよ。
あのままいた方が、きっと壊れてた」



「違う、私が弱いから…弱かったらだよ…」



もう少し私が強かったら。



怪我に負けじと、バスケ部のことを第一に考えていたら。



あんなことにはならなかったかもしれない。



良い状態で、私だってみんなと一緒に引退できたかもしれない。



「お前は弱くなんかない。
俺にはわかる。


ただでさえ弱ってる精神で、お前はいつも通り振る舞おうとしてた。


わかってたのに、俺もお前に何もしてやれなかった。結局周りと一緒なんだよ…」



ああ、どうして?
どうして楠木がそんな顔するんだ。



前にも見た、その辛そうな、悔しそうな表情。