そしたらようやく楠木が口を開く。
「……なんか、今さ」
「……何」
私が聞き返すと、楠木がこちらを向いた。
「斗真に嫉妬しかねぇんだけど」
「は……?」
突然の“斗真”という言葉に驚きを隠せない。
「何急に。
あんた、嫉妬なんてするの?」
「どんな偏見だよ、斗真には嫉妬しかねぇな」
まさかあの楠木が…嫉妬だなんて。
想像つかない。
確かに性格面では斗真の方がいいのかもしれないけど…楠木だって優しさは秘めてる、と思う。
実際何度か救われたし、それは事実だ。
なのに嫉妬?
「例えば何に対して嫉妬してるの?」
逆に気になって聞いてしまう。
「そんなの一つしかねぇだろ」
「一つしかない…?性格面とか?」
「違う」
「じゃあ何?」
「お前を独り占めしてたこと」
その真っ直ぐな視線に、思わずドキッとしてしまう。
「変なこと言わないでよ…ほら、ご飯食べよお腹すいた」
その眼差しから逃れるため、話題を変えてご飯を食べる。
それ以上追求されることがなく、楠木もご飯を食べ始めた。
そして、私が作った料理を美味しいと笑顔で言ってくれた時、嬉しかったっていうのは内緒の話。



