この時ばかりは助けてあげようと思い、リビングに入ろうとした私だけど、お母さんの一言で思わず足を止めた。
「あの子ね、楠木くんのことすっごく尊敬してたの」
少しだけ、お母さんの声のトーンが落ちた気がした。
わざと明るく振舞ってるような、そんな感じにも見える。
「……そうなんですか?」
楠木も驚いたように聞き返している。
うん、そうだよ。
すごく尊敬してた。
誰よりも上手いからって傲慢にならず、さらに上を目指して頑張ってて、もちろんサボってる時なんて見たことがない。
そんなバスケ思いの楠木のことを、尊敬以外の言葉では言い表せないと思う。
技術面では敵わないに決まってるけど、せめてそういう面では楠木のような人になりたかった。
一生懸命で、上手くなろうと努力する。
私の理想の人物像が楠木だったから。



