冷たい彼の溺愛は、2人きりのときに。




「ねぇ待って」
「なんだよ」



「ここ、どこ……」



周りを見渡すと、ようやく駅名の書かれた看板を見つけることができた。



なんとここは、私の駅の一本後。
つまり楠木の最寄り駅だ。



「ちょっと、どういうこと…!?」
「起きないお前が悪い。俺は起こした」



そんなの信じられるわけがない。
絶対嘘だ。



「じゃあ私は帰るから腕離して」
「……なぁ」



だけど楠木は手を離さず、代わりに振り向いた。



「まだ一緒にいたいんだけど、ダメか?」
「……っ」



少し落ち込んだような、どこか悲しげに私を見つめてきて、絶対演技だってわかってるのにそんな目で見つめられると断れそうにない。



「…田城?」


ほら、こいつはいつも上手だ。



いつもは強引なくせに、下からこられると逆に何も言えなくなる。