冷たい彼の溺愛は、2人きりのときに。




ーーー特に印象的で、起きたら覚えているような夢じゃなかったけど、なんとなく暖かいと思った。



温もりを感じる。



ただ心地よくて、ずっとこのままでいたいと思ってしまうほど……。



「……おい、田城。
起きろ」



それなのに、誰かに起こされて急に現実に引き戻された。



あれ…ここはどこだろう?



ゆっくりと目を開ければ、綺麗な顔で不機嫌な楠木が私を見ていて。



「着いたから行くぞ」



ぼーっとする私の腕を掴み、無理矢理立ち上がらせた。



それでもまだ意識がはっきりとしない私は、楠木に身を任せる。



そして外に出て、暑い空気が全身にまとわりついたその時。



ようやく暑さで目が冴えた私。



「……あれ、ここは…?」
「お前、がっつり寝てたな」



「うっ…ご、ごめん……」
「別にいいもの見れたからいいけど」



それだけ言うと楠木は歩き出してしまう。



いいものって何か気になったけど、それ以上にどうしても心に引っかかるものがあった。



それは、今降りた駅のホームに見覚えがないことだ。