冷たい彼の溺愛は、2人きりのときに。




『いつまで落ち込んでるふりしてるんだろうね』
『事故なんだから仕方ないじゃん』



私がいないところで本音を言う仲間たち。



『お願いだ、そんな顔でいるなら辞めてほしい。
引退試合目前で大事な時期なんだ。


空気が悪くなったら困る』



頑張って笑ってるつもりでも、どうしても上手く笑えなくて。



頑張ってるのに、必死で取り繕ってるのに、どうしても抑えきれなくて。



終いにはやめろと言われてしまう。



『……ごめん、別れよう。
俺に恵美は支えられない』



同じバスケ部だった彼氏も、怪我をきっかけに別れを切り出された。



『どうして…?
そばにいてくれるだけでいいの…』



バスケができなくなった状況で、彼氏の存在が唯一の光だと思っていたのに。



『ごめん、今俺は大事な時期なんだ。
やっぱりバスケは捨てられない。


俺じゃ恵美を笑わせることができないから』



そんな彼氏も、バスケを選んだ。



全部、全部、全部。
あの事故のせいで失ってしまった。