冷たい彼の溺愛は、2人きりのときに。




「それに別行動する必要ねぇだろ」



なんということだろう。
楠木が少し拗ねているように見えた。



可愛いところもあるんだ…って言っても、不機嫌な顔がメインなのだけど。



「効率いい方を選ぶでしょ」
「まだ時間あるだろ」



「時間?あるけど早く帰りたいの」
「なんでだよ」



「あんたが嫌だから」



それしかないのに、どうしていちいち聞くのかな。



まあいいや、と思いながらも私は楠木から荷物を取り返そうとする。



だけど奪い返せない。



「ちょっと、私持つから」
「バカか、お前に持たせるわけねぇだろ」



「なんでよ」
「そんなの俺が男だからな」



「男女差別野郎!」
「逆に好きな女にこんなの持たせる男がいるかよ」



不覚にもドキッとしてしまった。
こいつは簡単に好きな女と口にしたはずなのに。



一枚、いや何枚も相手が上手なような気がして悔しい。