「陽菜、いい?
あいつは女弄びたいだけなの」
「そう、なのかなぁ…そこまで悪い人には見えないよ?」
「それは陽菜が優しいだけ!」
何度私はあいつに迫られたことか。
キスまでされてるし、全部あいつの思い通り。
それが悔しくて許せないけど、夏休みに入ってからは文化祭の集まりがあるまで一度も会ってなかったため、その感情は薄れてしまっていた。
だけど思い出したことにより、またその感情が戻ってくる。
いっそのこと、このままずっと夏休みがいいな、と思いつつもう一度楠木の方を見れば相変わらず囲まれたまま。
「…気になるの?」
「え?」
「楠木くんのこと」
そう言って小さく笑う陽菜だけど、言いたいことがあまりわからない。
「どうして気にならないといけないの?」
「だって恵美ちゃん、何回も楠木くんの方見てるよ?」
「……嘘…」
「ほんとだよー?」
純粋な陽菜が言うことだ、きっとそうなのだろう。
恥ずかしい、指摘されるまで気づかないだなんて。
少しだけ顔が熱くなり、私は慌てて作業に集中することにした。



