冷たい彼の溺愛は、2人きりのときに。




「どーしよ…」



今渡そうかと思ったけど、楠木はまだ帰って来ていない。



結局そのままチャイムが鳴り、昼休みが終わってしまう。



さらには、あっという間に放課後になってしまった。



今日は文化祭委員の仕事はない。



せめてもう少し人がいなくなってから楠木に渡そうと思ったというのに、彼は立ち上がって帰ろうとしていた。



待って、なんで今日に限って…!!



まだ人がいるけど、ここで渡さないともうチャンスはない。



本当は渡すのをやめようかと思ったが、金曜のことを思い出すとちゃんとお礼は言わないといけないなと思った。



だから私は急いでお菓子の袋を持ち、教室を出ようとする楠木を呼び止める。



「楠木…!」



まさか自分の名前を呼ばれるとは思ってなかったのだろう、振り向いた楠木が私を見て両目を見開いた。