冷たい彼の溺愛は、2人きりのときに。




ーーー「恵美ちゃん、どうだった?」



あの後、先に私が教室に戻った。



教室に入るとみんなから視線を集めるわけで、真っ先に陽菜が私の元へ駆け寄ってきた。



「普通に言ってきただけだよ」
「じゃあ誤解解いてくれるって?」



「……どうだろ、わかんないや」



実はキスされた後、私は本来の目的を忘れてしまい逃げるように帰ったのだ。



だから結局、誤解を解いてくれるかどうかはちゃんと聞いていない。



「そっか…誤解されたままじゃ嫌だもんね」



私のことを信じてくれた上に、心配もしてくれる陽菜は本当に心優しい子だ。



陽菜の優しさに心が温かくなったところで席に戻り、鞄の中にまだ直していなかったお弁当袋を直す。



その時指に何かが触れ、カサッと音が鳴る。



「……あ」



また忘れてた。
お菓子を楠木に渡せていない。