冷たい彼の溺愛は、2人きりのときに。




「否定するならこっち向けば?」



楠木が小さく笑う。



悔しいけど、本当に悔しいのだけど、それは恥ずかしくてできなかった。



「田城?」



まるで誘惑するかのような、甘さのある声。
だけど私は騙されない。



離してもらうまで絶対動かないぞと心に決めていると……。



「まじさ、やばいよなぁ!」
「あはは!」



突然、遠くから笑い声が聞こえてきた。
その声だけでなく、足音すらも近づいてくる。



きっと、下の階から。
もしかしたら、移動教室のクラスなのかもしれない。



途端に私は焦り、楠木に呼びかける。



「楠木…!
誰かに見られたらダメだから…」



そんな私からやっと楠木は離れたかと思えば、そのまま腕を引かれる。



そのまま屋上への階段を上り、大きな屋上のドアの前で座らされた。