その近さは慣れなくて、一瞬にして金曜日のことを思い出してしまう。
「……っ」
一気に顔の温度が上昇する。
なんで…私は、こんなやつにドキドキしてしまうんだろう。
その時、驚いた表情をしていた楠木が薄笑いを浮かべた。
これは嫌な予感しかしない。
「…そんな顔して、キスして欲しいのかよ」
「ちがっ…」
そこでようやく私は顔を前に向けることができた。
「…惜しかったな」
「だから違うって…!」
何が惜しいだ。
こっちだってそんな簡単にキスされてたまるかっての。
「否定するわりには顔赤いけど。
後ろからでもわかるくらい」
楠木が余裕のある声で言い、私の頬に触れた。
「……ふっ、すっげぇ熱い」
「さ、触らないで…!」
その手を払おうとするけど、逆に私の腕を掴まれてしまう。



