「色々聞かれるのが面倒くさかったから逃げてきた」
「逃げてきたって、こうなったのはあんたのせいでしょ!?」
絶対に朝のせいだ。
あれがなければ今日も平和だったというのに。
「そんなの知るか、周りが勝手に誤解したのが悪いんだろ」
なのに楠木は、自分は悪くないと言う。
それも周りのせいだ。
「本当に最低最悪!
今すぐ誤解を解い、て…」
面と向かって言いつけてやろうと思った私がバカだった。
顔を楠木の方に向ければ、想像以上にその距離は近くて。
そりゃそうだ、今の状況は楠木に抱きしめられているのだ。
怒りでそれすらも忘れてしまった私ほど、バカな人間はいない。
すぐそらせばいいものの、固まってしまう私。



