冷たい彼の溺愛は、2人きりのときに。




「…あのさ、問い詰められるのが面倒なだけで、“そのこと”に関しては好きなように思ってくれればいいから」



否定と肯定もせずに濁すという、いかにも誤解を招くような言い方をして楠木は去ってしまう。



去り際に一度だけ、私を見た時の顔はそれはもう腹が立つ顔で。



「聞いた!?今の言葉!」
「嘘!やっぱり付き合ってるんだ…」



「マジかよ!
秀哉否定しなかったぞあいつ!」
「じゃあやっぱり…」



周りがさらに誤解を深める中、陽菜は心配そうに私を見つめてくる。



「……陽菜、ごめん」



私が謝って立ち上がると、陽菜はビクッと肩を震わせた。



「め…恵美ちゃん…?」
「ちょっとあいつと話してくる」



許さない。
絶対に許さないんだから…!



何が何でも誤解を解いてもらうため、私は急いで楠木の後を追う。



もちろんそれを見た周りは、さらに騒ぎ出すけどそんなことはどうでもいい。



後に誤解だと言えば済む話だ。