「……嫌い」
「俺は好きだけど」
「……っ、今言うなバカ」
誰が信じてやるもんか。
さらっと言ってしまうから、余計信憑性がない。
「ねぇ、注目されてるけどいいの?」
ドキドキしている自分の心臓の音を誤魔化すため、話題を変える。
「俺は逆にありがたいけど」
「どうして?」
「付き合ってるって周りが思うから。
もう今ので噂広まるだろうな」
最悪だ。
やっぱり楠木は周りに誤解してほしかったんだ。
じゃないと駅のホームで会った時、あんなこと言わないだろう。
そうなると完全に楠木が有利だ。
どうしよう、このままじゃ本当に恋人同士だと思われて広まってしまう。
「もうさ、手遅れだから早く諦めればいいのに、いつまで折れないつもりなんだよ」
まるで私が楠木と付き合うしか選択肢がない、みたいな言い方。



