「あんたってやつは本当に」
今回こそ思いっきり文句を言ってやろうと口を開けば、突然楠木に肩を抱き寄せられる。
「ほら、危ねぇから」
「……っ!?」
一瞬で何を言うか忘れてしまう私の横を、自転車通学をしている男子二人がすごいスピードで通っていった。
「……な?いつか怪我するぞ」
さっきまでバカにしたように笑ってたくせに。
いきなりそんな優しい声や眼差しに変わるから、つい胸が高鳴ってしまう。
なんで私ばっかりドキドキさせられないといけないんだ、このイケメン野郎!
悔しかったけど、今の表情を見て周りも騒ぎ出す。
そりゃそうだ。
ポーカーフェイスの楠木が、柔らかい表情になっているのだから。



