急いで振り返ってみれば、本人は楽しそうに笑ってる。
この確信犯め。
「……ちょ、聞いた?今の」
「うそっ、あの二人付き合ってるの?」
「堂々と見せつけてくるな〜」
「いーなー」
私が暴言を吐こうにも、周りの視線は私たちに集まっている。
ここで変に暴言を吐けば、私の命がさらに危なくなるのは目にみえているから何も言えない。
「……諦めれば?」
ああ、腹立つ。
本当に金曜の優しい楠木はどこへ行ったんだ。
「本当に最低」
「あっそ」
あっそ、って…!
ダメだ、いつか限界が訪れちゃうよ私。
もうお菓子渡すのやめようかな……。
「……あっ!」
「なんだよいきなり」
そうだ、すっかりお菓子のこと忘れてた!
今渡そうと思ったけど、改札を出てからも周りの視線がすごくて渡そうにも渡せないことに気づく。



