一度頭を左右に振ってから、楠木の方を見直す。



「あっ、楠木おはよー、奇遇だね〜」
「…すっげぇ棒読みだな」



楠木が笑って私を見つめてくる。
本当楠木にしてはよく笑うな。



「会いたくなかったからね」



金曜日に嫌いと言って別れたことを後悔していたはずなのに、その気持ちは何処へやら、今の私には怒りの感情の方が勝っている。



だって不意打ちでキスされて、あんな悪そうな笑顔浮かべてきてだよ!?



思い出したら余計に腹が立ってしまう。



「もしかしてまだ引きずってんの?」
「うるさい!女弄びやがって…!」



「…ふっ、言い方だろ」
「くそー、覚えてろ」



じっと睨んだところで、ふと視線を感じた。
そこでようやくはっと我に返り、周りを見る。



視線の正体は、ホームにいる同じ学校の生徒たちからのものだった。